四角錐シリーズは、千葉大学工学部工業意匠学科出身の笹尾ならではの作品だ。
「昔から工作は好きだったが、切絵は特に曲味があったわけではない」「タイポグラフィーを学んだことはないが、明朝体の情報量が多いところが好き」という。
「羅生門」では冒頭の154 文字を題材とし、文章の一部が四角錘となってせり上がり、それが2点目、3点目とだんだんと大きくなり、見るものに向かって鋭く伸びてくる。芥川に言葉のナイフを突きつけられたような感覚に襲われる。
笹尾は「文字が四角錘の頂点の延長線上から見ることによって、はっきりと見えるように計算した」という。「文学と幾何学はテーマの一つ。自分の作風の理屈っぽいところは、そういう出処だからかも」。
左:「羅生門・鼻」/右:「蜘蛛の糸・杜子春」