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ホテル雅叙園東京で生まれた幸せの物語

紅色
父への想いを、纏う花嫁

“花合せ”

それは花嫁にとって大切な日付を選び、
その月にちなんだ日本の花を襟元にあしらい、
色打掛と合わせる特別な着こなしのこと。
初めての衣裳合せに訪れたその花嫁は、
花合せの柄をスタッフに尋ねられると
そばにいた母親と一瞬目を合せてから
静かに答えた。

「4月の桜でお願いします」

彼女や、生涯の伴侶となる
花婿の誕生月でもなかった。
「プロポーズの記念月でしょうか?」
そう尋ねるスタッフに彼女は首を振った。
「4月は、父の誕生月です」

桜の花は、彼女にとって父親の象徴だった。
お花見と父親の誕生会を
一緒に開いたこともあった。
桜の木のように、たくましく優しかった。
そして今も、遠く空の上から
彼女を見守っている。

彼女の結婚が決まって間もなく、
旅立っていった父親。
かけがえのない父との想い出を襟元に抱き、
彼女は花嫁になる。